労働経済学 第8回
賃金と労働時間の経済分析
1.年功賃金と能力・成果主義
年功賃金から成果主義という説明は間違っている。
年功賃金も能力・成果主義賃金制度のひとつ
年功賃金制度は、賃金と貢献度を入社から定年までの長期でバランスさせるもの
ゼロ利益賃金経路:労働市場が完全であれば企業は労働者を搾取できないし、労働者も企業からむさぼることもできない
2.年功賃金の変化
標準労働者とは
勤続ゼロ年時の賃金:転職のペナルティ
日本は標準労働者の賃金プロファイルが急であることが特徴
アメリカでは、賃金上昇の70%は、最初の勤続10年に集中している
日本では、最初の10年では50%も実現していない
日本の賃金プロファイルは、確実に寝てきている
3.能力・成果主義の条件
(1)評価技術の問題
成果の評価をするのは難しい。目標管理制度、評価者訓練
→市場評価でチェックする必要がある
(2)評価の透明性
本人へのフィードバックが必要(どのような基準で評価して、なぜそうなったのか)
評価の透明化の副次的なメリット
@評価する側の評価能力を高める
A価格づけだけでなく、動機づけにつながる
(3)仕事の配分の問題
成果を挙げられない職種もある
→能力・成果主義の賃金・処遇制度の下では、従業員に可能な限り多くの選択肢を
与えるべき。
例:プロジェクト方式の仕事や社内公募制
4.労働時間と企業への貢献度
自動車の生産ラインのような直接労働力は、個人の労働時間と企業への貢献は比例する。
しかし、商品の企画やデザインなど労働時間が成果に結び付かない。
5.労働時間の趨勢
日本の労働時間(製造業生産労働者)
2150時間(1986年)→1948時間(2001年)
・国際比較(1995年、製造業生産労働者)
日本 1988時間
アメリカ 1943時間
イギリス 1869時間
ドイツ 1525時間
フランス 1537時間
・労働時間短縮の要因
@所得が上昇すると、余暇への需要が増える
A前川レポート
6.労働時間短縮のために
所定内労働時間、所定外労働時間
所定外割増賃金:日本の場合は25%、欧米では50%
ケース@(8時間労働):時給2000円、固定費用4000円、時間当たりコスト2500円
ケースA(10時間労働):時間当たりコスト 2400円(安くなる)
ケースB(25%割増、10時間労働):これで初めて時間当たり人件費コストが等しくなる