労働経済学b 第一回
1.所得格差の計測
社会の構成員が3人以上のときの所得格差は容易には計測できない。
ジニ係数とローレンツ曲線
ジニ係数はローレンツ曲線と45度線が囲む面積の2倍。社会の構成員が3人で、累積所得比率がA,B,Cだとすると、@〜Bの面積は以下のとおりとなる。
@((1/3)−A)×(1/3)÷2=(1/18)−(1/6)A
A((1/3)−A+(2/3)−B)×(1/3)÷2=(1/6)−(1/6)(A+B)
B((2/3)−B)×(1/3)÷2=(1/9)−(1/6)B
@〜Bの合計は (1/3)−(1/3)A−(1/3)B=(1/3)(1−A−B)
これの2倍がジニ係数
例えば所得が、1人目:2、2人目:3、3人目:5 だったと仮定すると、累積所得比率はA=0.2、B=0.5
だからジニ係数は 2×(1/3)(1−0.2−0.5)=2/3*0.3=0.2となる。
一般化されたジニ係数(Gini coefficient)
所得分配の不平等度を測る指標。縦軸に累積所得の百分比,横軸に累積人員の百分比をとるとき,対角線は分配の完全平等を示し,現実の分配は対角線を弦とする弓形の曲線で示される。これをローレンツ曲線といい,ジニ係数はローレンツ曲線と対角線で囲まれた部分の面積の2倍となる。
所得 yi
が所得の低い順に(y1,y2,……,yn)で与えられているとき,ジニ係数 G は
G=ΣΣ│yi−yj│/2μn2
i
j
で定義された値である。すなわちジニ係数とは,所得の組合せ(yi,yj)をすべての構成員について考え,その差(絶対値)の平均額を平均所得 μ で除した値の半分である。半分にするのは,所得のペア(yi,yj)と(yj,yi)の所得差が双方ともに考慮されているからにほかならない。したがって,たとえばジニ係数が0.4に等しいとき,任意に選びとった
2人の間の所得差は全体としてみれば平均所得の40%に相当していることになる。ジニ係数は完全平等のとき最小値0をとり,所得が1人に集中している完全不平等のとき最大値(1−1/n)をとる。
ジニ係数はローレンツ曲線を用いて図示可能である。すなわち均等分布線(対角線)とローレンツ曲線で囲まれた月形の面積の2倍にジニ係数は等しい。なおローレンツ曲線が交差する場合,ジニ係数とは異なる不平等の順序づけが他の指標(たとえば変動係数,これは標準偏差を平均所得で除した値)を用いると可能である。他の指標と比較すると,ジニ係数は中間所得階層の所得の動きに最も敏感であることが知られている。
上記の例(所得が2,3,5の3人で構成される社会のジニ係数を上の式で計算すると
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1 |
2 |
3 |
合計 |
1 |
0 |
1 |
3 |
4 |
2 |
1 |
0 |
2 |
3 |
3 |
3 |
2 |
0 |
5 |
合計 |
4 |
3 |
5 |
12 |
|
|
|
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平均 |
3.333333 |
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ジニ係数 |
0.2 |
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同じく結果は0.2となる。
(出所)社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/4660.html