経済社会学#2
1.経済社会はどのように発展してきたのか
(1) マルクスの考えた社会の発展
マルクスは資本主義を研究するなかで次のような発展をすると考えていた。
原始共産制→階級社会(資本主義)→共産主義社会
1)原始共産制
共同生産、共同分配。商品化はなされていない
土地は誰のものでもなく、果樹や野生動物も誰のものでもなかった。人々は、自分の労働力を売る必要もなかった。
2)階級社会の形成
資本主義の原点は新石器時代の農耕・牧畜社会にある。集落で得た余剰生産物をリーダーが独占する。そして、やがて、生産物ばかりか、土地や農機具などの生産手段もリーダーのものになり、それが子孫に継承されることによって、自らの労働を提供して糧を得る者と、生産手段を持つことにより働かずして糧を得る者に社会が分断されていく。
本源的蓄積
社会の構成員から、生産手段を支配階級が奪い取って、独占していく過程
貨幣経済
貨幣は単に物々交換の媒介となるだけでなく、資本主義をさらに強化する。しかもそれは、いまだに続いている。
鋳造貨幣の登場は紀元前7世紀。日本では信長が貨幣経済を確立させた。
→楽市楽座、関所の廃止、傭兵の確立
国有林野はなぜできたのか 明治期の近代売春制度
介護保険制度の確立(2000年)
流行も資本主義の強化につながる
階級闘争
階級社会のなかで、支配階級にとって一番恐ろしいことは、数のうえでは圧倒的な被支配階級が反乱を起こすこと。それを防ぐことに、支配階級はさまざまな工夫をしてきた。
資本主義の確立前には、支配階級は自分たち権力の根拠を神話や伝説に求め、身分を作り出し、その承継を正当化する。そして暴力で平民を抑え込む。
資本主義の下では、単純に身分によって階級が決まるわけではない。資本主義ではカネを持つものが支配者となる。しかし、そこにも階級を維持させるための巧妙な仕掛けがある。
・いつでも階級を移動できるという幻想、成功崇拝、実力主義の神話
・個人主義の浸透 →連帯の防止
・教育を通じた階級の継承
・メディアの支配と情宣活動
しかし、資本主義による抑圧は、産業革命(18世紀〜19世紀)で一層強化される。一日14時間労働、非人間的な生産システム。→プロレタリアートの登場、反資本主義の戦い(組合を作りストライキを行った)。
3)共産主義革命
マルクスは、資本主義社会を否定したわけではない。むしろ、資本の蓄積、生産性の向上のためには、必要な段階だと考えていた。しかし、プロレタリアートを抑圧し続けることはできず、やがて革命が発生し、国家の権力をプロレタリアートが奪取する革命が起こると考えていた。そしてプロレタリアート独裁の期間を経て、共産主義が確立すれば、国家も不平等も消滅すると考えた。
2.共産主義の失敗
1917年にロシアで、革命によって皇帝の権威が打ち砕かれ、持続性のある共産主義体制が確立された。1922年ソビエト社会主義連邦が誕生する。
レーニン(初代人民委員会議議長)の民主集中制
党員は指導者を選ぶ権利を持つが、指導者が決めたことは、党員は守らなければならない。
レーニン著『何をなすべきか』(1902年)
「私たちが必要とするのは、中央集権化された職業的な幹部たちであり、党は優秀な頭脳を持った一握りの人々によって率いられる。高度な階級意識を持った労働者だけが、党に入ることを許される。そして、党の方針に背いた者たちは追放されるのだ」。
利権と癒着と腐敗と役人天国 →ハンガリーとベトナム
単に支配階級が入れ替わっただけ。しかも、生産性の低下をもたらした。
組合結成の自由、報道自由、国外移動の自由、芸術の自由などが奪われる。
1989年 ベルリンの壁崩壊
1991年 ソビエト連邦解体